「人はなぜ物語を求めるのか」を読んだ



人間の思考の枠組みのひとつである「物語」「ストーリー」とは何か?というのを考える本。
特に目的もなく、なんとなく読んでみたわりにはとてもよかった。

この本ではストーリーを「できごと」と「その前後関係」という捉え方をする人間の思考の枠組みであるとして紹介している。
人間はストーリーによって多くの恩恵を受けている一方、ストーリーに捕らわれてしまうことで苦しい思いをすることもある。ストーリーという思考の枠組みについて知り、自覚することで、それにより苦しめられる危険を減らせるかもしれないですよ、というのが主な内容だった。

最近一緒のチームで仕事をしている @niku_name が以前、「人間の認知にはバグがあり、よく認知の偏りが生まれる」と言っていた。もしかするとその原因のひとつにこの本で扱っているストーリーという思考の枠組みがあるのかもしれない。



以下にこの本の中で僕が特に気になった話を記載しておく。いつか気合が出てきたらこれらの話が関係する参考文献を読んでみるかもしれない。

責任とは、どうやら、問いに答えることらしい

オーストラリアの脳外科医で精神科医のヴィクトル・ E・フランクルが「死と愛 実存分析入門」および「人間とは何か 実存的精神療法」で責任という概念を重視している、という話で出てきた言葉。
責任(Antwortung, responsibility, responsabilité)とは、どうやら、問いに答える(antworten, answer, respond, répondre)ことらしいのです。
この一節は「人生への期待を手放す」という章の中で出てくる。自分が人生に期待することをやめ、自分を待っている何かや誰かへの責任を自覚し覚悟することで、期待とセットである絶望を乗り越え、耐えていくことができるようになるという話だった。

これが気になったのは実はこの話での主張とはあまり関係がない。以前「責任」とはなんだろうということについて考えていたことがあり、その時にはそれに対する納得できる回答を思いつくことができなかった。それ以来、責任とはなんだろうなーということが気になっていた。
僕にとって「責任とは問いに答えること」というこの考え方はある程度納得感のある主張であるように感じられた。これについてはもうちょっと詳しい話を知りたいなと思っているので、紹介されていた2冊をいずれ読んでみたいと思っている。

「自分の感情の赴くままに行動すること」は選択がないので「不自由」

これを読んで「なるほど」というのと「そうなのか?」という2つの気持ちが湧いた。同じ章の中で「自分の感情の赴くままに行動すること」を「感情の奴隷」という表現に置き換えている場所があったのだけど、この表現になると「なるほど」という気持ちが強くなる。
自分自身の主たり得ぬものは何人も自由ではない
他人の行動やできごとを選択することはできないけれど、自分自身の行動は選択することができる。以前読んだ「成長マインドセット」という本でも出てきていた考え方だったように思う。
この本では自分のストーリーの主語を他人から自分にすることが、ストーリーに苦しめられることから脱する第一歩だ、という話として出てきている。自分が選択できるのは自分の行動なので、「他人が・・・してくれない」と考えることをやめ「自分が・・・する(しない)」という考え方をしていくことで真の自由を手に入れることができるという話と理解している。

とはいえ、この話については「知っている」と「できる」にはかなりの距離があるよねというのを感じている。幸い身近に僕よりこのあたりを実践できていそうな人がいるので意識してその振る舞いを手本にしていくとよさそうだ。実例があるというのはありがたい。

二度生まれ

それまでに獲得したライフストーリー(自分自身や世界をどのような世界観で認識するかということ)によって自分自身を不幸にしてしまうことがある。人によってはなんらかの経験によってそれを構築し直すことができる場合があり、そういった人達のことをこの本では「二度生まれ」と呼んでいる。

幼年期の世界観が人を縛って認知を歪ませる可能性がある、という話が途中で出てくる。自分自身の経験や観察と照らし合わせてみるとなるほどと思える話だった。


前書きで、ストーリーの悪い面を避け、いいとこだけを取って生きていくことができないだろうか、という話が出てくる。確かに自分を苦しめるものの正体を知ることでいまよりもう少しいい感じに生きていくことができるかもしれないなーと感じた。
最近は人生をより楽しんで生きるというのをひとつの目標にしているのだけど、それに役立ちそうな考え方を見つけることができて、たいした動機もなく読んだわりには得るものがあり大変よかった。なむなむ


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